Hacker Newsをプチ炎上させたLPが出来るまで

Posted on April 06, 2020  -  1 min read

つい先日、Hacker News でプチ炎上を経験しました。Hacker News は、読んでそのまま、技術やスタートアップの最新動向を取り扱うソーシャルニュースサイト。運営は、Y Combinator というお墨付きです。件名の最初に、「Show HN」と加えると、それは投稿者が新しくプロダクトを作ってみたのでレビューしてくれというトピックが付与されます。そして、私もこの度、初 Show HN デビューを果たしたわけです。

結果からお伝えしますと、82 ポイント(コメント数は 78 件)。投稿同日は、サイトのトップに入り込むほどの勢いを見せてくれたものの、やや否多めの賛否両論でコメント欄は荒れました。ですが、世界中からユーザーがアクセスするダイナミズムには今までかつてない高揚感に見舞われたものです。今回は、これに至る事の経緯と、ローンチにあたって工夫した LP の作り方について共有します。

何を Show HN したのか

Remotehour という、Web 通話アプリをローンチしました。まず、通話アプリといえば、Zoom や Google Hangout を思い浮かべる方が多いと思います。これらを用いる場合、予めスケジュールした時間に参加者を募り、通話をスタートすることになります。もしくは、Messenger や、Slack の通話機能でしょうか。今度は、どちらかが突然コールのリクエストを送り、タイミングが合えば受信ができるといった仕様になります。Remotehour は、どちらでもありません。

アプリのルームページを開くと、ステータスがオンラインになります。このオンラインである間は、同ページの「通話する」をクリックすると、何の動作もなく、相手に繋がります。言うなれば、待ち受け型の通話アプリ、まさに Zoom の 10 倍シームレスを実現しているわけです。

今回の結果を成功と受け取るのであれば、その秘訣は「LP」に尽きます。ローンチまでの一ヶ月、週次のフィードバックを 10 名以上に受けながら、明らかに分かりづらい点を一つずつ解消していきました。ちなみに、フィードバックは Pioneer トーナメントに参加すると毎週もらえます。勿論、自身も他参加者のフィードバックをやらなくてはいけないのですが。これは、これで非常に勉強になります。

では、ここからは時系列でどういうフィードバックを受け、どう直していったのかを紐解いていきます。

1 週目「何をやりたいのかが分からない」

残念ながら、フィードバックをした 6 割がプロダクトを完全に理解できていませんでした。要するに、ピッチに失敗していました。シリコンバレーでは、ピッチが何よりも重要だとされていて、それは投資家に対してのみではなく、顧客、友人や、家族に説明する際にも、一発で理解させられるもの出なくてはいけません。

「あなたの好きなタイミングで同僚と繋がれる 1:1 の Web 通話」。こうピッチを用意していたのですが、我ながらめちゃくちゃ分かりづらい。まずは、一言で何ができるのかを伝えるピッチを作る努力から始めました。

いろいろ模索しているうちに、出来上がったのが「顧客や同僚が、あなたが PC を開いている間ならいつでも話しかけられる。」に加えて、「会議ではなく、コワーキング専用の通話アプリ」です。Remotehour を通して実現したかったのは、オフィスに居ないながらも、「ちょっと、このデザイン見てもらえる?」といった話しかける体験です。これを強調するようなピッチに改善してみました。

Michael Seibel のピッチに関する動画は、何回でも見る価値があります。ポイントは、お母さんに言っても伝わるレベルに分かりやすく書いてみることです。Airbnb を空き部屋のマーケットプレイスと描写するよりも、家の空いている部屋を旅行者に貸し出すサービスとした方がずっと分かりやすいです。

2 週目「Zoom と何が違うの?」

ピッチの努力もあり、大半の人たちがプロダクトを理解してくれるようになりました。その後やってきたのが、結局、既存の通話アプリとは何が違うのかということです。前述にも記載したように、Remotehour は電話のかけ方という点において、他アプリと一線を画しています。そこで、LP の中で一番よく言われる、Zoom との違い、Slack との違いについてセクションを設けてみました。

Mail

また、ピッチの中にも「通話をスケジュールしたり、わざわざ掛ける必要がない。」という一文を加えました。こうした類似ツールを例に挙げて、プロダクトを説明する方法は相手に伝える上で最も分かりやすいやり方だなという印象があります。

こちらも Airbnb で例えておくと、ホテルで宿泊するのに比べて、割安でかつ、ローカルな体験を受けることができるといった具合です。プロダクトがどの既存サービスに取って代わるのか、そして、どの部分で抜きに出ているのか。Remotehour でいうならば、シームレスさはどこにも負けない自信があります。

3 週目「どんな場面で使えるの?」

確かに、Zoom とは違うと誰もが納得してくれるようになりました。その次に多かったのが「じゃあ、どんな場面で使えるの?」です。今までにないサービスだからこそ、想定されるユースケースも想定しにくいものかと思います。まず、自分自身が利用していたことと、何人かのアクティブユーザーがいたので、彼らにどんな使い方をしているのかを尋ね、ユースケースのセクションを新たに追加してみました。

Mail

実際に、Remotehour が使われているケースとして、フリーランスが複数のクライアントに対して部屋を提供していたり、起業家がベータテスターにいつでも通話をするように配布している例があります。

こうしてユーザーと話しているうちに分かったのが、Remotehour が 1:n のコミュニケーションに好まれて利用されていることでした。例えば、フリーランスと複数のクライアント、大学教授とその学生たち、医者と患者、こうしたコミュニケーションの中でこそ Remotehour の性質が生きてくるのです。

4 週目「文句なし。最高!」

そして、4 週目にしてようやくほぼ全員から最高のプロダクトだというフィードバックを受けるようになりました。プロダクトの機能自体はほぼ変わってはいないものの、言い回しや LP の表現を少し変えるだけでこんなにも評価が変わってくるということを学びました。

一方で、プロダクトのコンセプトが精緻に組まれていたことも大きく寄与しました。もし、思い込みや、頭の中だけで作られていたのであれば、1 週目や 2 週目の質問で心が折れていたはずです。「いや違うんだ、分かってくれていないだけだ。」と信じられるようなプロダクトと出会えるというのは、起業家としてこの上ない幸せだと感じることができます。

プチ炎上と、まとめ

ローンチ日には、Hacker News と Product Hunt に出しました。過去の経験から、Product Hunt で 100 票くらいは入るだろうと踏んでいたのですが、300 近くまで投票を受け、Hacker News からは一晩で 1 万人近くの人たちがサイトに足を運ぶ結果となりました。

LP には、私にすぐに通話をかけられるデモのセクションも用意しているのですが、フランス、インド、アフリカ、香港、世界中からコールが鳴り止まない体験をして、これが世界でプロダクトを作る醍醐味かと興奮しました。もちろん、その日は寝れませんでした。

ちなみに、炎上した要因は、Zoom の 10 倍シームレスな体験と誇張広告で投稿してしまったことにあります。全く問題ありません。そのうち、Zoom より 100 倍シームレスな体験を提供してみせますから。